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​岡田 洋一

「食べる」のむこうがわとこちらがわ
 

~自分の「食べる」を考える~
ただいま、某コ〇ダコーヒーでたっぷりサイズのブレンドをすすりつつ、フライフィッシュバーガーにかぶりついている。ふと思う。自分にとって「食べる」とは何なのか?なぜ、わざわざ車を走らせ、ここに来てまで「食べる」という行動に及ぶのか。その自分の答えはシンプルだ。食べたいから、それに尽きる。けれど、なぜ食べたいのか?を想像する。よく分からないが脳の中や生体は複雑に働いているに違いない。味、香り、見た目、食感、噛みごたえ…心と身体をフル動員して「うまっ!」と感じた体験が、記憶にしっかりと刻まれ、ふとした瞬間に「また食べたい!」と呼び戻される。その積み重ねが「食べたい」という欲求を生むのだろうか。もちろん、お腹が空くという生理的な要因も「食べたい」を後押しする。「食べる」は、それだけで完結しない。朝起きて(生活リズム)、準備して(ADL)、移動して(IADL)、お店で注文(社会技能)して、品物が運ばれるまで待って(感情抑制)…そのすべてが「食べる」を叶えるために機能している。「食べる」とは、いくつもの行為や人としての機能を組み合わせて成り立つ、ひとつの大きな生活活動なのだと感じる。臨床では「咀嚼」や「嚥下」、「自分で食具を使えるか」など切り取った機能や行為に焦点化されることが多い。しかし、少し視野を広げてみると「食べる」は本来、もっと多くの生活行為が連動していて、それぞれが密接に関係し合っている複合体ではないかと思える。ちなみに、私は一人暮らしで、職場でも一人で食事をすることが多い。つまり、いわゆる孤食が日常だ。誰かと一緒に楽しく食べる機会は、正直あまりなく、少し寂しい現実でもある。人と「会う」という行為の中に、一緒に「食べる」があると、会話が生まれ関係性もさらに深まる。「食べる」はそれ自体が目的であると同時に、誰かとの時間を彩る役割も果たしている。しかし、ものの本によれば「誰かと一緒に食べる」ことが、状況によっては“共食圧力”にもなり得るという。「食べる」のあり方は人それぞれであって自分の価値観や経験が正解だと決めつけ、それを押しつけてしまうことのないよう慎重でなければならないとは思う。いずれにしても「食べる」ことを、「もぐもぐ、ごっくん」とだけ捉えてしまうと作業療法として大切なものを見失ってしてしまうような気がする。
~お子さんの「食べる」を考える~
「いただきますのむこうがわ」と言われると、想像力が乏しい自分は「食べることができたら、その先どうなるの?」「食べられなかったら、その先どうなるの?」と「食べる」時(とき)を起点にして、その後のことを想像しようとする。そして「むこうがわ」が存在するならば「こちらがわ」があるのかなとも思える。少々強引な感じもするが「こちらがわ」とは、発達のつまずきの有無にかかわらず、その人なりに栄養を自身に取り込むことを学ぶ過程と、その過程で不随する体験や学習のことを自分はイメージする。くどい言い回しだが、たとえば哺乳は満腹と母との愛に快を感じるし、離乳は感覚や操作によって触れるものの性質を体験し、自分の体に取り込めるものかどうかの判断ができるような準備になる。逆を言えば母との愛を感じるために哺乳があり、離乳という作業によって体や心の機能が発達的な変化を遂げる。これを「こちらがわ」とするならば、「むこうがわ」には、そのお子さんや家族なりの健康、楽しみ、社会参加など単なる個体保持の栄養吸収のみでなく、その人らしい社会文化的な意味合いのある豊かな生活という景色が見えるのかも知れない。 臨床において「食べる」ことの問題にしばしば出会う。その困難さやつまずきは個別性が高く十把一絡げに扱うことなど到底できず、同時に適格な作業療法の提供に頭を悩ます。この難題はお子さんの個体の特徴や特性、さまざまな環境でのそれぞれの体験、養育者の想いや価値観など実に多くの要素がひしめきあう。当日のサークルでは「食べる」ことの本質や奥深さ、こちらがわとむこうがわについて参加される方々の多様な考え方、意見、感じ方を自分の栄養として取り込み、自分なりの豊かな作業療法に出会いたいと思う。


                                                                                                                             岡田洋一

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